就業規則の作り方と見直しのポイント|10人未満の会社にも必要な理由
自社の就業規則、最後にいつ見直したか覚えていますか?
「作った記憶はあるけれど、キャビネットのどこかに眠っている」「先代のときに作ったまま」という会社、実はとても多いです。なにに、カスハラ対策の義務化や最低賃金の引き上げなど、就業規則に関わるルール変更はこの1~2年で一気に進んでいます。古い就業規則は、いざというとき会社を守ってくれません。
今回は、就業規則の基本の「き」から作り方の流れ、そして2026年に見直しておきたいポイントまでをまとめます。
就業規則とは|会社を守る「ルールブック」です
就業規則は、労働時間や賃金、服務規律など職場のルールを定めた文書です。「従業員のためのもの」と思われがちですが、本当のことを言うと、いちばん守られるのは会社側です。
問題社員への注意や懲戒処分は、就業規則に根拠の規定がないと原則としてできません。遅刻を繰り返す、無断欠勤する、SNSで会社の悪口を書くなど就業規則に定めがなければ、処分しようにも「何に違反したのか」を示せないわけです。トラブルが起きてから作っても、その従業員には間に合いません。
10人以上の会社は就業規則の作成が「義務」です
常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法89条)。この「10人」には正社員だけでなく、パート・アルバイトも含みます。違反すると30万円以下の罰金の対象です。
作成から運用までの流れは4ステップです。

- 作成:自社の実態に合わせて条文を作る
- 意見聴取:従業員の過半数代表(労働組合がなければ過半数代表者)から意見を聴き、意見書をもらう(同意までは不要ですが、聴取は必須です)
- 届出:意見書を添えて労働基準監督署へ届け出る
- 周知:全従業員がいつでも見られる状態にする(掲示、共有フォルダなど)
意外と見落とされるのが4つ目の周知です。就業規則は周知されて初めて効力を持つとされていて「社長の机の引き出しに原本があるだけ」では、裁判で効力を否定された例もあります。
何を書く?|必ず書くこと、規則を決める場合は書くこと

記載事項は2種類に分かれます。
絶対的必要記載事項(必ず書く)は3つのグループに分けることができます。
- 労働時間関係:始業・終業時刻、休憩、休日、休暇(有給休暇を含む)
- 賃金関係:賃金の決定方法、計算・支払いの方法、締め日と支払日、昇給
- 退職関係:退職の手続き、解雇の事由
相対的必要記載事項(制度を設けるなら書く)には、退職金、賞与、服務規律、表彰・制裁(懲戒)、安全衛生などがあります。懲戒処分をしたいなら制裁の規定が、賞与を「業績によっては出さない」運用にしたいならその旨の規定が必要、ということです。
10人未満でも作った方がいい3つの理由
「うちは5人だから関係ない」と思った方にこそ、お伝えしたいことがあります。
1.助成金の多くは就業規則が前提です
たとえば、キャリアアップ助成金の正社員化コースは、就業規則に転換制度の規定があることが要件です。「申請したいときに就業規則がなくて、そこから作って間に合わなかった」は、本当によくあるパターンです。
2.トラブルのときの根拠になります
従業員が5人でも、問題行動やSNSトラブルは起きます。人数が少ない会社ほど1件のトラブルのダメージが大きいので、ルールブックの価値はむしろ高い気がします。
3.採用の信頼材料になります
求職者は入社前に労働条件を気にします。ルールが整っている会社だと示せることは、人手不足の時代の採用力に地味に効いてきます。
2026年の見直しポイント|この5つをチェック

すでに就業規則がある会社は、次の5点を確認してみてください。
1.カスハラ対策
2026年10月からカスハラ防止措置がすべての会社の義務になります。方針や服務規律、相談窓口の規定を反映しましょう。

2.熱中症対策
2025年6月から罰則付きで義務化されています。報告体制や対応手順、就業規則の安全衛生の章に矛盾がないかの確認をしましょう。

3.賃金規定と最低賃金
毎年の最低賃金引上げで、賃金テーブルが実態とずれていないか確認しましょう。今年も10月ごろに改定が見込まれます。

4.育児・介護関係
ここ数年、育児・介護休業法の改正が続いています(子の看護等休暇の拡大、柔軟な働き方の措置など)。古い条文のままだと法律未満の規定になっている恐れがあります。
5.正社員転換の規定
キャリアアップ助成金を使う予定があるなら、転換制度の規定は必須です。

法改正で法律の基準が就業規則を上回った場合、その部分は法律のほうが適用されます。つまり、古い就業規則は「知らないうちに一部が無効になっている」状態になり得るわけです。
ひな形のコピペには落とし穴があります
厚生労働省のモデル就業規則をそのまま使っている会社も多いのですが、注意してほしいことがあります。モデル就業規則は「あらゆる制度が整った会社」を想定した、いわばフルスペック版です。
実際にはやっていない制度(退職金や休職の手厚い規定など)をコピペで残すと、就業規則は労働契約の内容になるので、会社は書いたとおりに義務を負います。「規定上は退職金があることになっていた」が争いになった例は少なくありません。ひな形は出発点として使いつつ、自社の実態に合わせて削る・直す作業が必須です。
また、一度定めた労働条件を従業員に不利な方向へ変更する(不利益変更)には、原則として合意や合理性が求められます。「とりあえず手厚く書いておいて、あとで直せばいい」が通用しない世界なので、最初の設計こそ慎重におこなう必要があります。
就業規則は「作って終わり」ではなく「育てるもの」
就業規則は一度作れば終わり、ではありません。法改正のたび、会社の成長のたびに見直して育てていく文書です。逆に言えば、きちんと育てている就業規則は、助成金・採用・トラブル対応のすべてで会社の味方になってくれます。
当事務所では、就業規則の新規作成(実態ヒアリングから)、既存規則の法改正対応の診断、カスハラ・熱中症など今年の義務化への対応まで、まとめてお手伝いしています。「うちの就業規則、古くないか見てほしい」だけでも大丈夫です。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。
